文月悠光

読みもの

この惑星(ほし)に呼ばれて

文月 悠光

冬の真ん中を過ぎて

季節の余白に光が射した。

残された手足は

予感を拒もうと

毛糸の奥に縮んだまま。

息の白さに追いつきたくて

知らぬ間に駆け出していた。

 

もう一度生まれるには

どうしたらよいだろう。

木の芽のように

息を吹き返すには?

人間には方法がない。

風は土の匂いを運んでくるし、

空はきざしに満ちているのに

人はいつも出遅れてしまう。

 

わたしたちは、まばたきする度

故郷の夏を燃やしている。

潤んだ黒い瞳で滅ぼしている。

おかえりなさい。

惑星を守り、惑星と暮らそう。

きみが虹になって

わたしのなかへと

帰ってくるように。

 

わたしたちは

光の速さで地を去って

虹となって帰ってくる。

すこやかに笑うにわか雨。

ここへ帰り着くために

降りそそいできた。

傘を叩く雨粒よ、知らせてほしい、

きみがこの惑星に呼ばれたわけを。

 

 

 

(作曲家・田中達也氏の依頼により、合唱曲の歌詞として制作。複数の詩から言葉を抜き出した。

初出:二〇一六年NHK全国学校音楽コンクールにて、豊島岡女子学園高等学校合唱部が演奏。

演奏の音源はこちら http://bit.ly/2qJLNNR

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